Wonderwallから始まり、ノエルに終わる

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精神病というレッテル

いとこの女の子は石川県民だ。金沢市金沢駅から車で30分ぐらいの田舎町で、高校まで石川で過ごし、大阪の専門学校でフラワーデザインを専攻した。

彼女は、未来に輝かしいものを感じていた。しかし、就職先の花屋が家族経営で、徹底的に”いじめられて”、鬱病から躁鬱病になり、半年間精神病院に入院した。もう10年以上、前の話だ。

そのときに、金沢から大阪の僕の家に電話があり、「S子が入院した、精神病院なんだけど」とまるで打ち明けるように、S子の母親が言った。まるで不吉な予言を告げるように。

「近所には、知られたくないから内緒にしている」と言っていた。田舎は、すぐに噂が広まっていくとのことだった。僕は彼女が懸念している意味が分からなかった。病気で、病院に入ったのなら、むしろ公言して、お見舞いに来て貰ったりした方がいいんじゃないか、と思った。


S子は、退院後しばらくは不安定だったが、やがて精神を取り戻し、シューズショップでアルバイトをしている。今では、薬も飲んでいない。病気だったということは、”なかったこと”になっている。
「病気のことなんて、知らないし思い出したくもない」と言っていた。


その数年後に、僕は重たい統合失調症になった。精神病院へ入ることになり、2017年現在で5回入院している。



そこで、出会った患者のなかに、親と上手な関係を築いていないという人がいた。「親が精神病というレッテル張ってきますねんやわ」
彼は不満げに言った。三ヵ月の入院予定が、既に半年以上に伸びていた。彼の病名は分からなかったが、このレッテル張りは僕にも経験があったので、しみるようによく分かった。



就職活動をしていて、病歴は? という質問に、「実は精神病を患っていまして……」と正直に打ち明けたことが何度かあった。すると、すぐに態度が変わり、相手にされなくなってしまった。健常者と競い合う立場で、メンタル持ちを取る必要性はよほどでないとないだろうし、「完全に、100%再発がないと言い切れますか?」という質問には、たじたじになった。



皆さんは、統合失調症双極性障害の知識をどの程度持っているだろうか。統合失調症は、幻聴や幻覚、妄想。双極性障害は、別名躁鬱病。鬱になったり、躁になったりする気分病だ。僕は両方の経験があり、現在では双極性障害と診断されている。


あるいは、こういった病気を理解しようと務めている人も多いかもしれない。しかし、患者の僕からすれば、病人になってみなければ、その心根は永遠に理解できないと思う。


理解できないということを端っこの方に追いやる、という人々も存在する。僕は病気になって多くの友人を失い、仕事を何度か失った。精神病患者=理解できない、と結論付けてしまうような人々とは、付き合うことが難しいからだ。


MIXIでやり取りしていて、病院までお見舞いに来てくれた友達だって、ディティールは忘れたけど、「お前は、もう一回入院しろ!!」というメッセージを貰った。そこで、その友達との付き合いは終わった。


僕は幸い、薬を服薬していると、健常者と変わらない。気分は安定しているし、仕事をすることもできる。だけど、そうじゃない患者も無数にいる。僕も含め、彼らはレッテルを張られる。そして、そのことを息苦しく思い、生きていくことが惰性になってしまうことだってある。


張られてしまったレッテルは、容易には引き剝がせない。それでも生きている。生きているのが、僕たち精神病患者だ。